TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)に関して、地方議会でも色々議論がされています。各地の地方議員が、その考え方をインターネット上でも披露しています。ほとんどの意見が懸念するところは同じであります。
各地の農業団体から地方議会に対して「TPP交渉参加反対に関する請願」のような形で、交渉に参加することにも反対するように国に対して意見書を提出して欲しいという請願が上がってきています。
農業の大切さはいうまでもなく、切り捨てていいと思っている人はいません。農業県である新潟県議会でも、今回の会議では結論を出さず、請願は継続して審査することとしました。その上で、拙速に参加することがないように求めた意見書を国に提出することを決めています。
先日書き込んだことですが、糸魚川市議会でも、「JAひすい」から出された請願に対し、私たちは同様の趣旨で「継続審査」の申し出をしましたが、建設産業常任委員会で委員賛否同数となり、委員長の「苦渋の決断」で「採択」となりました。この苦渋の決断というところが、大変重要なところです。
本会議で、再度「継続審査」の申し出(動議)があり、賛成少数(11:14)で「継続審査」は否決され、意見書の提出がなされることになりました。
議会本会議の手順としては、「動議」として出された「継続審査」を諮り、否決となったので賛否を問うことになりました。
「継続審査」に賛成した議員は、「請願」の願意に対して否定的ではなく、むしろ「願意はよく分かるが、糸魚川市議会として、国益全体を考えて判断が下せるほどの情報がない」ということで「継続審査」を主張しているのであって、「反対」ではない立場から「反対討論」は行いませんでした。
何名かの議員から「賛成討論」がありましたが、どの賛成討論の内容にも、委員長の苦渋の決断の要素が盛り込まれていなかったのは、ちょっと残念でした。
継続審査を望んだ議員にも「農業はどうでもいい」と思っている議員は一人もいません。「製造業VS農業」のような産業間の争いに発展させることなく、日本全体の国益を考えて農業に対する手厚い支援で守り、食糧自給率を上げる議論を並行しながら、慎重に審議しようというものです。
今回の「継続審査」の申し出に対して、感情的に「弱者を切り捨てようとしている」ようなことを言っている方もいるようですが、全く違います。農業を大切にする気持ちは同じであり、何としても守っていかなければならないと思って継続審査なのです。
新潟日報によりますと、新潟県議会に関して、
自民は「展望を全く示さないまま、6月までに考えるとする姿勢は、農家の不安を高めて当然」と菅政権を批判。「製造業と農業といった)産業間の争いにしてはいけない」とも訴え、食料安全保障の観点やTPP参加による影響を見極め、拙速に参加することがないよう求めた。
対する民主も「慎重な対応を求める意見書」を提出。「経済的利益だけではなく、国益第一に考え、慎重な判断と対応を行う必要がある」と主張した。その上で、農林漁業への戸別所得補償の強化や食料自給率の向上などの対策が必要とした。
採決の結果、自民案が賛成多数で可決され、民主案は賛成少数で否決された。
政府は、11月9日に、例外なき関税撤廃を原則とするTPP(環太平洋パートナーシップ協定)について関係国との協議を開始すると明記した「包括的経済連携に関する基本方針」を閣議決定した。
(平成22年12月18日 新潟日報)
次に、新潟県議会が採択した意見書を引用します。
TPP交渉に関する意見書(新潟県議会)
我が国においては、過去長い間GATT・WTOの多角的貿易体制を支持してきたが、FTAを求める声の高まりを受けて、平成13年にシンガポールとのEPA交渉を開始して以来、EPA戦略を推し進め、現在までに11件のEPAが発効したところである。さらに、広域経済連携の構築を目指し、日本、中国、韓国、ASEAN10か国にオーストラリア、ニュージーランド、インドを加えたCEPEA(東アジア包括的経済連携構想)の実現に向けて研究が進められているところである。
また、米国やEUも従来の近隣地域とのFTAのみならず、アジアなどとの地域横断型のFTAも積極的に推し進めており、現在も多くのFTAが交渉中あるいは発効を待っている状況にあり、今後FTAはさらに増えていくことが予想される。
このような状況の中で、TPPは加盟国間で取引される全ての品目について、原則として関税の完全撤廃を行うだけでなく、金融サービス・保険や人の移動などを含む包括的な枠組みを目指すものであることから、あらゆる分野に波及するとともにその影響も計り知れないものと予測される。我が国の将来を大きく左右するものであるにもかかわらず、何らの議論がなされることもなく、唐突にTPPについて関係国との協議開始が表明されたことは誠に遺憾である。
TPPへの参加については、産業界からは歓迎の意向が示されているが、国内農業への影響を懸念する声も強く、世界的な食料不足が確実視されている中で、我が国の食料安全保障の観点からもTPP参加による影響を十分見極め、しっかりとした国家戦略を確立するための議論を深める必要がある。
よって国会並びに政府におかれては、TPPに関して国民的議論が行われ、合意がなされないまま拙速にTPPに参加することのないよう強く要望する。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
平成22年12月17日
新潟県議会議長 小 野 峯 生
衆議院議長 横 路 孝 弘 様
参議院議長 西 岡 武 夫 様
内閣総理大臣 菅 直 人 様
外務大臣 前 原 誠 司 様
農林水産大臣 鹿 野 道 彦 様
経済産業大臣 大 畠 章 宏 様
国家戦略担当大臣 玄 葉 光一郎 様
泉田新潟県知事は、TPPには米(こめ)を除外するように主張しています。
産業界全体を底上げしながら、その原資で農業を守っていく政策をとらなくてはならないでしょう。日本経済全体が沈んでしまっては、農業対策も講ずることが出来なくなってしまいます。「拙速にTPPに参加することのないように」とは、ここの政策を並行して検討して具体的に決定しなければならないことを言っているのですね。
また、TPP参加、不参加の影響の試算も明確にならなければ、(初期の報道では不参加による影響はマイナス13兆円強)どんな対策がどのくらいの大きさで必要かも分からず対策も決まりませんから、「情報も足りないので継続して慎重審議」する必要があるのです。
他の産業界から、TPP参加促進の請願が上がってきたとき・・・・。
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